ザ・ローリング・ストーンズ 『Hackney Diamonds』

The Rolling Stones / Hackney Diamonds

The Rolling Stones / Hackney Diamonds

ローリング・ストーンズ、2005年の “A Bigger Ban”以来のオリジナル・アルバム。間にベスト盤だったりライヴ盤なんかがでているから、久々って感じはあまりしないものの、新曲ばかりのアルバムは18年ぶりということになる。

そしてチャーリー・ワッツが亡くなってから最初のアルバムでもある。チャーリーの代わりをキースのソロ・アルバムやエクスペンシブ・ワイノスでおなじみのスティーヴ・ジョーダンが叩いている。しかし本アルバムにはチャーリーが叩いている曲も2曲ある!

しかもゲストも豪華で、かつてのメンバーであったビル・ワイマンも参加しているし、エルトン・ジョンやスティーヴィー・ワンダーにレディ・ガガ、そしてポール・マッカートニーときたもんだ。

ここで曲目を。

  1. Angry
  2. Get Close
  3. Depending On You
  4. Bite My Head Off
  5. Whole Wide World
  6. Dreamy Skies
  7. Mess It Up
  8. Live By The Sword
  9. Driving Me Too Hard
  10. Tell Me Straight
  11. Sweet Sounds Of Heaven
  12. Rolling Stone Blues
  13. Living In a Ghost Town (bonus track)

“Angry” はキースのメモにも「典型的なストーンズの曲」と書かれていたようだが、本当にそれで、冒頭からすぐにこれはストーンズだと分かる。また、過去のアルバムや映像を街中のビルボードで再現したPVも良い感じだ。

2の “Get Close” はルーズな感じのドラムから始まり、ブルージーなリフが繰り返される。とても力強い音。スティーヴ・ジョーダンのドラムはチャーリーとはまた違った響きをしていて、改めてチャーリーの不在を知らしめてくれる。だけどストーンズには変りないというのも分かる。なお、ピアノはエルトン・ジョン。

3の “Depending On You” は、なんとなく “Wild Horses” を彷彿とさせる。ギターの音色やピアノがそう思わせるのかもしれない。

4の “Bite My Head Off”ではポール・マッカートニーがベースで参加している。ポールが参加なんて、”We Love You”とかあの辺以来じゃないのか?ストーンズ流のパンクなんだけど、80前後の爺様たちがこんな曲をやっているなんて最高じゃないか。

続いて似たタイプの “Whole Wide World” は、ストーンズの曲ってこんなにギターがギュインギュイン鳴ってたっけ?と思うぐらい疾走感があるんだけど、ずっとプッシュしているだけでなく、ちょっと「引き」も入ったような良い曲。

“Dreamy Skies” はゆったりとしたカントリー・ミュージック風。それがどこか”Sweet Virginia”を思い出させる。こういうレイドバックしたような曲は必要。

“Mess It Up” はスネアのタイトな音ですぐに「チャーリー!」と分かった。『エモーショナル・レスキュー』とか『女たち』あたりに入っていてもおかしくないダンスナンバーとでもいおうか。CDの解説の日本語訳を読んでもそれに近しいことが書かれていた。

そして “Live By The Sword”もチャーリーが参加している曲。そしてベースはビル・ワイマン。かつてのストーンズが揃っているのが嬉しい限りだ。

“Driving Me Too Hard” は冒頭で”Tumbling Dice”が始まるのかと思った。ミック・ジャガーも昔のストーンズの雰囲気があると言ってるようだ。

“Tell Me Straight”はキースが歌うナンバーで、いかにもキースって感じの曲で、ストーンズのアルバムには欠かせないもんね。

“Sweet Sounds Of Heaven”は前半では”You Can’t Get What You Want” を思わせる。そして途中からスティーヴィー・ワンダーのフェンダー・ローズとレディ・ガガのヴォーカルが入り盛り上がりを見せる。ゴスペルっぽさもある。盛り上がりも最高潮に達していちどブレイクが入ってミックとガガさんのかけあいで再度盛り上がる7分強の素晴らしい曲だ。

そして最後が彼らのバンド名のきっかけともなった “Rolling Stone Blues”。マディ・ウォーターズの曲でもあり、ミックとキースがストーンズを始めたきっかけの曲で、この曲は2人だけの演奏と歌となっている。だけどこの曲をやったのは初めてらしい。

 

ここまではアルバム本編で。リリース前に曲目を見たときに「あの曲は入ってないのか」とおもったのが、日本盤ボーナストラックとして収録されている “Living In a Ghost Town”だ。コロナ禍でロックダウンされているときに発表された曲で、今回ばかりは日本盤を買って正解と思った。だけど改めて聴くとこのアルバム向きの曲じゃないなと何となく思った。だからボートラで正解。

 

さて、アルバムを聴いて感じたのは、各曲で頻繁に感じたあの曲に似ているというところ。”Angry”のPVもそうだけど、ストーンズもこれまでを総括しているかのようだ。彼らもそれなりの年齢だから、そういう感じになるのも分からなくはないし、かつての曲の数々に似ているからって単なる焼き直しではなく、ちゃんと2023年の音として提示してくれているのが凄いと思った。

なんだかんだ言ってるんだけど、要するに、もうアルバムを出してくれただけで有難いんですよ。彼らは60年も活動しているけど、俺も40年も聴いてきたんだよな。まさか40年経ってもストーンズの新譜が聴けるなんてウソみたいだけど、本当なんだよな。1990年の初来日公演に行った俺に教えてやりたいよね。おまえ30年経ってもストーンズの新しいアルバム聴いてるぞと。あの頃は30年もやっていてすげえなって感じだったのにね。

そういえば、今回はアルバム2枚分ぐらいの録音をしたと言ってるようで、もしかしてさらに1枚出るのかもしれない。是非聴かせて欲しい。

【全文翻訳】ザ・ローリング・ストーンズが18年振りの新作発表会見で語ったこと
ミック、キース、ロンが参加し、YouTubeでも生配信され、そのユーモアで会場が盛り上がったイベントの全模様の翻訳を掲載します
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